アントニオ・ヤニグロの CD
高2の夏、おこずかいの日、欲しかったこの CDに収められている小品集のレコードを買いに走った。早く聴きたくて急いで下宿に戻り、ワクワクしながら机に置いた赤いプラステック製のポータブルレコードプレイヤーで聴いた事を昨日のことのように覚えている。今はもうどこへ行ったかそのレコードは無いが、その中に収められているショパンのノクターン Cis -moll (チェロ版)があまりにも美しく、これがピアノ曲だったとは知らず、チェロの曲として何度も繰り返し聴いた。演奏はイタリアのアントニオ・ヤニグロ。映画「戦場のピアニスト」にも使われたノクターンである。こんな曲が弾けたらいいなぁ、とちょうどチェロ科に転科したばかりの、まだ希望に満ちていた頃、、、
1970年頃、NHKの教育音楽番組でその頃来日していたフランスのモーリス・ジャンドロンのボッケリーニのコンチェルトを聴いた。今は美しい音色で完璧なほどのテクニックを持った演奏家が多くいるけれど、私は血の通ったジャンドロンの温かい音色と真摯な演奏にとても強く惹かれた。
CDのない時代、録音技術も今とは違うし、レコードから出てくる音は実音とは少し違っていたかもしれないが、この頃のチェリストは個性溢れた人間味のある演奏家がたくさんいた。モーリス・ジャンドロン、無駄のないヴィヴラートのハンガリーのヤーノシュ・シュタルケル、ウクライナ出身のグレゴール・ピアティゴルキ、倉田澄子さんの先生のフランスのポール・トゥルトゥリエ、ロシアのダニール・シャフラン、イイノホールまで聴きに行ったフランス人の女流チェリストのレーヌ・フラショーなど、どの演奏家もその人が感じられる演奏だったように思う。もちろんフルニエやカザルスだっていい。思い出すだけでもこんなにたくさんの好きな演奏家がいた。
最近は情報量が多すぎてネットでいろんな演奏が聴けるようになったのはいいけれど、なぜだか強く惹かれる演奏家になかなか出会わない。私が歳とってついて行けないだけかなぁ、、、
それでも中にはお気に入りの演奏家が何人かはいる。今もガット弦を使用し、温かみのある音にこだわりを持った演奏スタイルのイギリスのスティーブン・イッサーリス、ロンドンのエリザベスホールで聴いたピーター・ウィスペルウェイのサンサーンスのコンチェルト、ムジークフェラインでショスタコービッチのチェロコンを演奏した女流チェリストのソル・ガベッタ。華奢に見えた彼女の上腕の筋肉がすごくてその迫力と力強い演奏が新鮮だった。アンコールに自作の曲を歌いながらチェロを弾くなんて今まで見たことがなかったからもうびっくり!声も素晴らしく圧巻の演奏だった!
今日はちょっと原点に戻り、1961年のモーリス・ジャンドロンの映像映画を聴いて過ごす。ホッとする〜!やっぱり好きだな〜この人の演奏。
0 件のコメント:
コメントを投稿