2014年10月27日月曜日

ハプニング

きのうホテルで小さな内輪の食事会があった。義父から m さんと演奏をして欲しいと頼まれ、ピアノがあると言うことだったので、リハーサルをしたいと思い少し早めに会場へ出かけた。会場に入るとピアノの形をした電子ピアノが部屋の奥隅においてある。あら〜話が違う〜。仕方がないのでそれなりに弾くしかないわね、と思ってとりあえずチェロの弾く場所を決め、音を出してみる。弾きにくい!電子ピアノのスピーカーがずーっと向こうの天井の隅の両脇に二つ、そこから電子音が聞こえている。音も遠いし音色も違うし、そばにいたミケッレさんは『大丈夫どっちの音もちゃんと聞こえているよ』というので、わたしもまぁなんとかなるでしょう。と思ったのに、のに。安易だった。いざ、演奏に入ると人が入ったこともあって、スピーカーから電子ピアノの音が小さくしか聞こえない!テーブルについている人には聞こえていたようだけれど、部屋の隅に近い場所で弾いていた私に聞こえるのはそばで弾いている電子ピアノの実音とプラスティック鍵盤をたたく音だけ。mさんも自分の音がよく聞こえないらしい。

パリノートルダム寺院の美しいアラベスク模様の扉

おまけに絨毯でチェロの音が吸われるし、位置確認したのに前の人との距離が1メートルほどの至近距離。よりによってである。頼りのピアノの音がほとんど聴こえないのではデュエットにならない。弾き始めてすぐにパニックとなり、弓がふるえだした。こんな経験はあまりないことだった。しかし途中でやめるわけにもいかずとりあえず一曲目のバッハのアリアを終える。2曲目の愛の挨拶になったらこんどは悪条件って重なるもので、音程がとれない、そうだ、古くなった D 線を新しいのに取り替えたからだとおもった。間近でとり替えてはいけないことくらいわかっていたのに、どうしても音が気に入らなかった。どんどん音が下がっていく。音程が取れない!開放弦は使わないようになんてとっさのことはできないし、そこでパニックも頂点な達した。もう開き直って弾くしかなかった。背後の電子ピアノの気配を感じ取りながらもなんとか最後までたどり着く。電子ピアノとスピーカーの位置をできるだけくっつけてそこで弾けば良かったかも。と反省。絵画は納得いくまで塗り直しが効くけれど、音楽は音が消えていってしまうその場限りのもの。二度と弾き直しなどできないのだ。たとえどんな環境でも弾けなければいけないのかもしれないが、とても恐い体験だった。

窓を飾るパリのアパートメント

以前、パリに留学していた H 氏の帰国記念演奏会を聴きに行ったことがある。広瀬量平のチェロコンチェルト本邦初演だった。出だしのC線をいきなり切ってしまった。H氏はおもむろに立ち上がり舞台袖へ引っ込んで、しばらくして弦を張り替えて何事もなかったかのように弾き始めた。途中で音程が気になるのか、たびたび指で弦を叩いて音を確かめているようだったがそんな出来事にもひるまず素晴らしいコンサートだったのを思い出した。

油断は禁物!!!
教訓でした。

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