今でも思い出すのは、近くの海岸に行った時のこと。父は自分の背丈ほどもある流木を見つけて来て『棒がいっぽんあったとさ〜葉っぱかな〜♪』と砂浜に大きくコックさんの絵を書いて遊んでくれた。父の書いている姿が目に浮かぶ。
冬には猟犬のメリーという名前のコッカスパニエル犬を連れ、猟に出掛け、お正月にはいつもといっていいほど、キジや鴨のそれは美味しいお雑煮を頂いたものだった。また、弟達とキジの羽に鉛筆の芯を差して、絵を描いたりして遊んだ事も懐かしい。
そして、父にはもうひとつ趣味があった。メノウや虎目石などの原石を、丸や楕円の形に磨いてコレクションしていた。ただの石ころのように見える石が磨かれて、すこしずつきれいな色が現れていくのをそばで見ているのがとても面白かった。
中学生だった私に父が造ってくれた楕円の形をした薔薇キセキのブローチがある。
もらった時は嬉しくて紺色のオーバーの襟につけたりしていたけれど、その後ほとんどつける事がなく、片方だけになったイヤリングや古くなってしまったネックレスなど捨てるに捨てられないものを入れた箱に、一緒に長い間しまい込んでいた。
ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド 春一季咲きなのに狂い咲き?
せっかく造ってくれたのに、何て冷たい娘でしょう。今からでも、もっと身に着けてあげましょう。