久しぶりの恵みの雨に庭の植物達もホッとしているよう。
そういえば、小学3、4年の頃だったと思う。学校の帰り道、急な坂道を下ったところにいくつもの田んぼが広がっていて、そのあぜ道を歩いていると、田んぼの中に長〜いトコロテンのようなカエルの卵が目に止まった。ふと、これを持って帰って、育てたらカエルになるところを見られるかもしれないと思い、急いで家に帰り小さなブリキのバケツを片手に一人、再び田んぼへ戻った。
田んぼにたどり着いたとたん、どしゃ降りの雨にあい、全身びしょぬれになったけれど、カエルの卵を取ることに夢中だった私は、ビショ濡れになることなど少しも気にならなかった。今思うと少し気持ちが悪いけれど、その時はヌルヌルしている卵が『なんて気持ちいい手触りだろう』と思った。そして卵が途中で切れないようにそーっと出来るだけ長くバケツいっぱいに卵を入れて帰った。
その頃住んでいた家の奥には大きな土間があって、どういうわけかカラのドラム缶がひとつ置いてあった。とりあえずその中に水を張って、取ってきたカエルの卵を入れ観察することにした。始めのうちは何の変化もなかったが、しばらくしてオタマジャクシとなって、やがて手足が出はじめ、尾っぽがちぢまってきたところまでは面白くて、日に何度も見に行ったりしたけれど、そのうちなんだかつまらなくなって、いつしかすっかりオタマジャクシのことは頭から離れてしまっていた。
そしてある日の真夜中、最初に気づいたのは父だった!蛇の寝床のような家の長い廊下をケロケロ、ケロケロ、鳴き声がする。廊下に出てみると何十匹という緑色のカエルが廊下をピョンピョン跳ねながら大行進。案の定、父から大目玉を食うことになってしまった。
何の心配もなく駈けていたあの頃の懐かしい思い出。
雨上がりの庭