急に涼しくなって体を動かすのも楽になってきたので、思いきって納戸の整理をしていたら、Mちゃんのバレエの写真が出てきた。懐かしいー!女の子は姿勢の良いのも財産のひとつと思って習わせたのだけれど、勧められてのお稽古事だったからか2年しか続かなかった。
昔、私の通っていた小学校の講堂に毎日曜日、隣町からバレエの先生がお稽古に来ていた。
ある日曜日、校庭に遊びに行くと、近所に住む少し年上の3姉妹が講堂でバレエのレッスンを受けているのが見えた。私は外から窓越しに眺め、しばらく見とれていたことを覚えている。
後になって、教えにいらしていた先生というのは、当時モダンバレエで有名だったEGUCHI兄弟のお弟子さんらしいということが分かった。
幼かった私はバレエにクラシックとモダンがあるなんていうことも知らずに、その頃の少女雑誌によく載っていた、今も現役で活躍している有名なバレリーナが、白いチュチュを着てピンクのトーシューズ、頭には冠をつけポーズをとっている写真を見て、素敵だなぁと憧れを抱いていた。今思い返しても本当に恥ずかしいことだけれど、チュチュを着て踊りたい一心で、母に頼み込み、どうにかバレエを習わせて貰えることになった。
いざ習い始めて、わたしはあまり体が柔かい方ではなかったので、柔軟体操のときなど体を反らしてクルッとブリッジしているお姉さんたちを見ては、私もいつかあんな風に出来たらと思うのだった。
そしてお稽古の休みの日などは、朝から家の二階の部屋と部屋の仕切りを外して、少女雑誌の付録でついてきた「美しく青きドナウ」の赤色のソノシートをかけ、妄想の世界に入り込み、すっかり気分はバレリーナになったつもりで、でたらめな踊りを踊って遊ぶのが好きだった。
ある日、二階の掃除にやってきた母に気づかず、いつものでたらめな踊りをしていた。スーッとふすまが開いて目の前に母が立っているではないか!心臓が止まるんじゃないかと思うほどの恥ずかしさで、体が硬直してしまった!『ここで何してるのー。』とあきれ顔の母は掃除をすることなく下に降りて行ってしまった。
(つづく)